構造主義の概念をわかりやすく解説! レヴィ=ストロースや機能主義とは?

「構造主義ってどういう意味?」「構造主義と機能主義って何が違うの?」と疑問をお持ちの方はいませんか。

構造主義とは、レヴィ=ストロースが生み出した、私たちが生きる社会には基底的な構造があるという考え方です。

少し抽象的な概念なので、構造主義について具体的にイメージできないという方もいるかもしれません。

そこで今回の記事では、構造主義の意味、構造主義を唱えた人物「レヴィ=ストロース」、構造主義における重要な考え方、実存主義について紹介します。

構造主義とは?

社会科学や人文科学の分野で耳にすることが多い構造主義。何となくはイメージできるものの、構造主義の意味についてよくわかっていないという人も多いのではないでしょうか?

ここでは、構造主義の意味や構造主義を唱えた人物、成立した背景、について確認していきましょう。

構造主義の意味

構造主義とは、1960年代に登場した概念で20世紀の現代思想に大きく影響しています。

精選版 日本国語大辞典 (2023年11月15日閲覧)によると、構造主義の意味は以下の通りです。

民族学、社会学、言語学、心理学、生物学、哲学の用語。一九四〇年代からフランスの人類学者レビ=ストロースによって民族学の理論として提唱された。たとえば、未開社会の近親婚タブーや交差いとこ婚の婚姻関係について、それを存続させるために働く潜在的な相互依存の機能的連関を構造としてとらえ、その構造を明らかにしようとするもので、二〇世紀後半の新しい潮流を形作った。

言い換えれば、私たちが生きる社会の基底的な構造を明らかにしようとする立場のことです。

少し抽象的でわかりづらいかもしれません。構造主義の成立背景や主な考え方についても後ほど触れるので、まずは成立した背景や構造主義を唱えた人物を確認していきましょう。

参考:精選版 日本国語大辞典 (2023年11月15日閲覧)

構造主義を唱えた人物「レヴィ=ストロース」

構造主義を唱えた人物は、フランスの社会人類学者、および民族学者であるクロード・レヴィ=ストロース(Claude Lévi-Strauss)です。

レヴィ=ストロースは、1908年に両親が一時滞在していたベルギー・ブリュッセルで誕生し、フランス・パリで育ちました。

父親の職業が画家であったこともあり、少年期にはピカソやストラヴィンスキー、ワーグナーなどに関心を抱き、日本の美術工芸にも興味を持っていたと言われています。

両親の知人の影響によりマルクス主義について知る機会があり、社会主義運動に参加するなど、精力的に活動しました。

ソルボンヌ大学を卒業した後は、法学学士号の取得にとどまらず、、アグレガシオン(哲学教授資格試験)に合格しています(研修の同期にはフェミニズムにおいて重要人物であるシモーヌ・ド・ボーヴォワールがいたそうです)。

1930年から9年間、社会学を講じるためブラジル・サンパウロ州に滞在します。

ユダヤ系の両親をもつレヴィ=ストロースは、ナチスによるユダヤ人迫害を恐れ、アメリカ合衆国・ニューヨークに亡命しました。

その後も精力的に研究活動を続け、享年100歳で2009年に死去しました。

レヴィ=ストロースの主著には、『親族の基本構造(1947年)』『悲しき熱帯(1955年)』『構造人類学(1958年)』『野生の思考(1962年)』などが挙げられます。

構造主義が成立した背景

構造主義の構想のきっかけは、ロシア・モスクワ出身の言語学者ローマン・ヤコブソンと言われています。

レヴィ=ストロースがヤコブソンと出会ったのは、ナチス・ドイツから逃れるために滞在していたニューヨークでした。

そこでヤコブソンはレヴィ=ストロースに「近代言語学の父」と呼ばれる、フェルディナン・ド・ソシュールの研究を紹介したと言われています。

同研究では、言葉が現実世界を形成していくといった主張がされており、レヴィ=ストロースはこれらの言語学のアイデアを人類学に拡大しようとしました。

具体的には、ソシュールの研究を発展させたヤコブソンの音韻論をもとに、この世の中に存在する社会的・文化的現象には目に見えない構造があると考えるようになりました。

構造主義における重要な考え方

それでは、構造主義はどのような特徴を持った考えなのでしょうか?ここでは、構造主義における重要な考え方を確認していきましょう。

機能主義への批判

レヴィ=ストロースは機能主義に批判的な態度を示します。

デジタル大辞泉(2023年11月15日閲覧)によると、機能主義とは「諸要素の機能や相互の関係に着目し、それぞれが全体の維持にどうかかわっているかという観点から、文化・社会現象をとらえようとする立場」のことです。

構造主義が「さまざまな要素が繋がることでより大きな構造を成している」と考えるのに対し、機能主義は「さまざまな要素がその機能をもつ」ことを意味します。

具体的には、親族体系を理解する過程で、レヴィ=ストロースは機能主義を批判します。

例えば、近親相姦のタブーに関して機能主義の立場をとった場合、「近親相姦は遺伝的に悪いという機能があるからタブー化している」と主張します。

一方、構造主義は「近親相姦によって社会が崩壊した前例はない」「父方のイトコは結婚が許されて母方は禁止されている事実を説明できない」など、機能主義に批判的な考えとなります。

参考:デジタル大辞泉(2023年11月15日閲覧)

神話の分析

構造主義は神話の分析にも適用されます。

具体的には神話を構成要素(男と女、生死、文化と自然など)に分解して、それぞれの関係を分析していくといったものです。

姫となる女性の存在を救済するストーリー構成(英雄の旅)が構造パターンとしてみられるなど、構造主義の考えを用いることでパターンを発見することができます。

こういった分析方法は、神話だけでなく、未開の思考やトーテミズムなどにも拡大していきました。

構造主義と一緒に確認しておきたい重要な概念

ここでは、構造主義と一緒に学ぶべき重要な概念を紹介します。

実存主義

哲学分野で耳にすることが多い実存主義。

精選版 日本国語大辞典(2023年11月15日閲覧)では、実存主義に関して以下のように定義されています。

・第二次世界大戦直後、フランスのサルトルによって造語された思想運動。

・人間の実存、つまり理性や科学によって明らかにされるような事物存在とは違って、理性ではとらえられない人間の独自のあり方を認め、人間を事物存在と同視してしまうような自己疎外を自覚し、自己疎外から解放する自由の道を発見していこうとする立場をいう。

・ドイツのハイデッガー、ヤスパース、フランスのマルセルは、哲学によってこの企てを試み、フランスのサルトル、カミュは、文学作品をとおし、また、後期のサルトルは、政治への参加によって、この企てを試みている。

まとめると実存主義とは、人間を中心に据え、個人の存在を重視する考えのことです。

レヴィ=ストロースは実存主義者のサルトルを批判しており、現在も実存主義と構造主義を巡るさまざまな論争が繰り広げられています。

参考:精選版 日本国語大辞典(2023年11月15日閲覧)

まとめ

今回の記事では、構造主義の意味、構造主義を唱えた人物「レヴィ=ストロース」、構造主義における重要な考え方、実存主義について紹介しました。

構造主義とは、レヴィ=ストロースが言語学の考えに影響を受けて打ち出した考えです。構造主義は現代思想において重要な概念として位置付けられています。

今回は構造主義の他に実存主義を紹介しましたが、構造主義はポスト構造主義やジェンダー学、精神分析学、社会学など、さまざまな分野で応用されています。

そのため、構造主義を理解することで、他の分野への理解も深まるかもしれません。


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