「ルサンチマンとはどう言う意味?」
「ニーチェが唱えたルサンチマンを理解したい」
という人はいませんか?
ルサンチマンを簡単に説明すると、「他人の成功を妬ましく思う状態」のことです。
このルサンチマンはニーチェの思想を理解する上で重要なポイントになるので、哲学分野に興味がある人はルサンチマンの意味を理解することが大切です。
今回の記事では、ルサンチマンの意味や語源、ルサンチマン症候群の意味、ルサンチマンと重要な哲学者、ルサンチマンの具体例について紹介します。
ルサンチマンの意味
「恨み」や「怨恨」などの意味をもつルサンチマン(Ressetiment)。
フランス語なのであまり聞き慣れない方もいるのではないでしょうか?
精選版 日本国語大辞典 (2023年11月7日閲覧)によると、ルサンチマンの定義は以下の通りです。
怨恨、遺恨、復讐感情。 特に、ニーチェの用語で、弱者の強者に対する憎悪をみたそうとする復讐心が、内攻的に鬱積した心理をいう。 キリスト教の道徳、社会主義運動などのなかにこの心理があるとされる。 |
簡単に説明すると、ルサンチマンとは他人の成功を妬ましく思い、自分の状況と比較して不満や怒りを感じてしまう感情のことです。
このルサンチマンという言葉は哲学の分野でよく用いられます。
ルサンチマンの語源
ルサンチマンはフランス語「Ressentiment」の借用語です。
元々Ressentimenは「恨み」や「怨恨」といったネガティブな意味だけでなく、「感じ取ること」などの意味を持っていたと言われています。
しかし、やがてRessentimenがネガティブな意味合いで使われるようになり、現在の「不快に感じる」といった意味を持つようになったようです。
ちなみにRessentimenの動詞は「Ressentir」であり、「〜を感じる」、「〜影響を痛切に感じる」といった意味になります。
ちなみに「ルサンチマン症候群」の意味とは?
ルサンチマンについて調べていると、「ルサンチマン症候群」というキーワードを目にすることがあると思います。
ルサンチマン症候群とは、他人の幸せを妬み、攻撃してしまう発作のことです。
例えば、SNSで友達の幸せ自慢を不快に感じてしまい、アンチコメントなどをしてしまう行為もルサンチマン症候群と言えるでしょう。
自分が平均より上、周りより優位に立っていると感じる人は、このルサンチマン症候群に陥りやすいです。
ルサンチマンと重要な哲学者
キルケゴールやニーチェなど、ルサンチマンを理解する上で、知っておいた方が良い哲学者がいます。
ここでは、重要な哲学者を確認していきましょう。
キルケゴールとルサンチマン
引用:いらすとや
セーレン・キルケゴール/キェルケゴール(以下、キルケゴール)とは、19世紀に活躍した、デンマーク=ノルウェー・コペンハーゲン出身の哲学者です。
実存主義の先駆けとなった人物として知られており、「死に至る病(1849年)」や「あれかこれか(1843年)」、「反復(1843年)」、「おそれとおののき(1843年)」など、さまざまな著作を出版しました。
ルサンチマンの概念を最初に提唱したのは、このキルケゴールと言われています。
キルケゴールは「妬みが定着すると水平化の現象となる」と唱え、ルサンチマンの概念を打ち出しました。
「妬みが定着すると水平化の現象となる」とは、「相手を妬む気持ちから相手を自分の位置まで下げること」を意味します。
例えば、お金持ちに嫉妬心を抱いた人物は、「お金持ちはズル賢いから豊かになれる」と思い込むことで、自分の気持ちに折り合いをつけます。
このようにキルケゴールは強者の視点からルサンチマンの概念を確立したのです。
ニーチェとルサンチマン
フリードリヒ・ニーチェ
キルケゴールが強者の視点からルサンチマンを考案したのに対し、弱者の視点からルサンチマンの概念を展開したのがフリードリヒ・ニーチェ(以下、ニーチェ)です。
ドイツの哲学者であるニーチェは、「ツァラトゥストラはこう言った(1883〜1885年)」をはじめ、「愉しい学問(1882年)」、「善悪の彼岸(1886年)」などの著作で知られています。
ニーチェの思想はマルティン・ハイデガーやジャンポール・サルトル、ジル・ドゥルーズなどの哲学者に影響を与えました。
ルサンチマンに関しては、ニーチェは「道徳の系譜(1887年)」の中でルサンチマンを再定義しました。
ニーチェとキリスト教
ニーチェは牧師の家庭に生まれたものの、キリスト教にはルサンチマンが潜んでいると主張し、キリスト教を批判しました。
実際に、ニーチェから「神は死んだ」という言葉を連想する人は多いのではないでしょうか。
ニーチェは、キリスト教の教えには「弱者の生活は強者によって虐げられているが、弱者は祈り続けることで神の国に近づける」という考えがあると指摘しました。
こういった考えが禁欲主義や原罪などの価値観を生み出し、人間が楽しみや成長意欲を忘れてしまうことを危惧したのです。
超人思想
このようにニーチェはキリスト教を批判しましたが、キリスト教に変わる新しい価値観が必要とされました。
そこで登場したのが「超人思想」です。
超人とは、自分の弱さを認め、強い精神と自分なりの価値観を持って生きていく人間を指します。
ニーチェの言う「末人」は自分の弱さを認めるものの、その状況を正当化しようとするルサンチマンを含んだ状態のことです。
しかし、ニーチェはこの末人やルサンチマンを打破するためにも、積極的に生きる態度が必要とし、「超人思想」を唱えました。
ニヒリズム
ちなみにニーチェはキリスト教を批判する上で、「ニヒリズム(虚無主義)」と呼ばれる立場を確立していきます。
ニヒリズムとは、「絶対的な価値の意味がなくなること」です。
これまでキリスト教が絶対的な権力を持っていた社会で、常識が常識ではないことを提示しました。
このような状況において新しい価値観が必要とされたため、先ほど紹介した「超人思想」が登場したのです。
ニヒリズムに関しては、以下の記事で詳細を紹介しています。
ルサンチマンの具体例
ここまでルサンチマンについて概念的なことを紹介してきました。
ここでは、どのような状態がルサンチマンに該当するかを理解するために、具体例を確認していきましょう。
芸能人やセレブのゴシップ
現在は、芸能人やセレブのゴシップ記事が取り沙汰されていますが、これはルサンチマンが深く関わっていると考えられます。
前提として、芸能人やセレブは「お金持ちである」や「人生得している」、「容姿が整っている」などのイメージと結び付けられやすいです。
こういった前提のもと、自分自身の状況と比較することで、ルサンチマンが生じてしまいます。
そのため、本来自分とはあまり関係のない芸能人だとしても、ある芸能人が不祥事を起こした際に「炎上」してしまうのです。
まとめ
ルサンチマンの意味や語源、ルサンチマン症候群の意味、ルサンチマンと重要な哲学者、ルサンチマンの具体例について紹介しました。
ルサンチマンとは、他人に対して妬みや嫉みといった感情をもち、不満や怒りを感じてしまう状態のことです。
コペンハーゲンの哲学者であるキルケゴールがこのルサンチマンを初めて提唱したと言われています。
ニーチェはキリスト教道徳にはルサンチマンがあるとしており、その状態を乗り越えるためには超人思想が必要であると指摘しました。
このようにルサンチマンの概念は複雑ですが、それぞれの哲学者の考えや、当時の社会状況を把握することで、ルサンチマンについて理解しやすくなります。
コメントを残す