「実存主義とはどういう思想?」
「サルトルやニーチェが唱えた実存主義とは?」
など、実存主義に興味がある方は多くいるのではないでしょうか。
実存主義とは、人間を主題に捉え、個人がどう生きるべきかを探求する考え方のことです。
技術の発展や資本主義の影響により、人間がより画一的になっていくことを恐れ、個人を重視する実存主義が台頭しました。
今回の記事では、実存主義の意味や定義、対義語、キルケゴールやニーチェ、ハイデガー、サルトルなどの実存主義における主要な哲学者について紹介します。
複雑な実存主義ですが、本記事では簡単に定義や思想を解説するので、参考にしてください。
実存主義とは
ニーチェやサルトルについて調べていると「実存主義」という言葉を目にすることがあるかと思います。
実存主義とは、一体どのような考え方を指すのでしょうか?
実存主義の定義
少し複雑かもしれませんが、まずは実存主義の定義を確認しておきましょう。
精選版 日本国語大辞典(2023年11月11日閲覧)では、実存主義は以下のように説明されています。
第二次世界大戦直後、フランスのサルトルによって造語された思想運動。 人間の実存、つまり理性や科学によって明らかにされるような事物存在とは違って、理性ではとらえられない人間の独自のあり方を認め、人間を事物存在と同視してしまうような自己疎外を自覚し、自己疎外から解放する自由の道を発見していこうとする立場をいう。 ドイツのハイデッガー、ヤスパース、フランスのマルセルは、哲学によってこの企てを試み、フランスのサルトル、カミュは、文学作品をとおし、また、後期のサルトルは、政治への参加によって、この企てを試みている。 |
さまざまな思想家や作家が実存主義の立場をとっていることがわかります。
しかし、定義や説明を見ただけでは実存主義を捉えるのは難しいのではないでしょうか?
以下で、実存主義の意味についてもう少し紐解いていきましょう。
実存主義を簡単に説明すると?
実存主義を簡単に説明すると、19世紀のヨーロッパで広がった、人間を中心に据え、個人のあり方を重視する考え方です。
当時のヨーロッパでは、科学技術の発展や資本主義の広がりにより、人間が画一化していきました。
実存主義らは個人が主体性を失っている状況を危惧し、従来のように普遍的な本質を追求するのではなく、より現実的で個人に焦点を当てることで、主体性を回復することを目指しました。
実存主義の主な思想家には、キルケゴールやニーチェ、ハイデガー、サルトル、ヤスパースなどが挙げられます。
実存主義の対義語
実存主義の対義語、および反対の立場としてよく挙げられるのは、本質主義です。
本質主義とは、個別の事物が本質(不変の核心的部分)を有しており、内実が規定されていく考え方を意味します。
例えば、「女性らしさが形成されるのは、性染色体によるもの」という考えは、本質主義的であると言えるでしょう。
なぜなら、女性らしさが社会的に形成される可能性を否定し、その要因を「本質」と結び付けているためです。
本質主義には限界があることが認められており、多くのフェミニストや学者の間で本質主義に対する批判が行われています。
実存主義における主要な哲学者
ここでは、実存主義における主要な哲学者を紹介します。
キルケゴール
引用:いらすとや
セーレン・オービュ・キルケゴール(Søren Aabye Kierkegaard)とは、デンマーク=ノルウェー・コペンハーゲン出身の哲学者です。
キルケゴールは実存主義の創始者と言われており、西洋哲学に大きな影響を与えました。
主な主著に『あれか―これか(1843年)』、『不安の概念(1844年)』、『死に至る病(1849年)』などが挙げられます。
主体的真理
主体的真理とは、客観的で普遍的な真理ではなく、個人がそのために生き死にたいと思う主観的な理想のことです。
キルケゴールは例外者として独自の価値を持つことが大切であると主張しました。
実存の三段階
キルケゴールは『死に至る病(1849年)』の中で、人間が主体的な存在になるためには、「美学的実存」「倫理的実存」「宗教的実存」の3段階のプロセスが必要であると説明しました。
美学的実存とは、目の前の快楽を追い求めようとするが、最終的に人生の虚しさを感じてしまう段階のことです。
続いて、倫理的実存の段階では、人間がいずれ死ぬことと向き合い、普遍的な真理を追求します。
しかし、そういった客観的な基準に基づいた選択が正解とは限らないと気付き、宗教的実存に移行します。
宗教的実存においては、自分の有限性を見つめ、無限の存在である神と向き合います。
キルケゴールはこういったプロセスを通じて、人間が主体性を得られると考えたのです。
ニーチェ
引用:いらすとや
フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche)とは、1844年にプロイセン王国で誕生した思想家です。
『ツァラトゥストラはこう言った(1883〜1885年)』をはじめ、『愉しい学問(1882年)』、『善悪の彼岸(1886年)』など、世界的に有名な数々の著作を出版しました。
ニーチェは人間の生き方を主題に思想を展開したため、実存主義と位置付けられています。
ニヒリズム
ニヒリズムとは、「絶対的な価値や基準には意味がない」という考え方のことです。
ドイツの哲学者であるフリードリヒ・ヤコービ(Friedrich Jacobi)がニヒリズムという言葉を哲学的に使用したと言われています。
ニーチェはキリスト教の在り方を批判したことで、ニヒリズムの思想に至りました。
超人思想
ニーチェは、絶対的な価値など虚無であると考え、キリスト教に代わる新しい価値が必要であると考えました。
そこで登場したのが超人思想です。
超人思想とは、価値観や基準にとらわれず、自分の価値観を肯定する考え方を意味します。
ニヒリズムから脱却するために、積極的に生きようとする態度が必要と考えたのです。
そのため、ニーチェの思想は「積極的ニヒリズム」と呼ばれます。
ニーチェの思想に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。
ハイデガー
マルティン・ハイデガー/ハイデッガー(Martin Heidegger)とは、1889年に誕生した、メスキルヒ出身の哲学者です。
20世紀最大の哲学者と称されることもあり、『存在と時間(1927年)』などの著作で知られています。
人間は死に対する不安を感じると、ただの「ダス・マン(世人)」になってしまうと主張しました。
「存在」や「存在者」などの概念を用いながら、人間の存在意義を追求していたのです。
サルトル
ジャン=ポール・シャルル・エマール・サルトル(Jean-Paul Charles Aymard Sartre)とは、フランス出身の哲学者です。
主著として『実存主義とはなにか(1945年)』、『存在と無(1943年)』、『弁証法的理性批判(1960年)』などが挙げられます。
サルトルは人間は自由な存在であると主張しました。
例えば、コップや鉛筆は「目的」があって誕生するものですが、人間はそういった目的を持ちません。
しかし、自由であることは苦悩や孤独が伴うだけでなく、自由であるためには同時に責任を負う必要があると考えました。
まとめ
今回の記事では、実存主義の意味や定義、対義語、キルケゴールやニーチェ、ハイデガー、サルトルなどの実存主義における主要な哲学者について紹介しました。
実存主義とは、人間をメインテーマにしながら、個人の生き方や人生の意義を探求する考えのことです。
キルケゴールやニーチェ、ハイデガー、サルトルなど、思想家によって考え方は異なりますが、各人の実存主義に共通して言えることは「自分なりの価値を創造すること」でしょう。
現代を生きる私たちにとって重要なテーマであるため、ぜひそれぞれの思想にも触れてみてください。
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