哲学に興味がある方の中で、「カントの思想について理解したい」と考えている人も多いのではないでしょうか?
カントは近代哲学を理解する上で欠かせない重要人物です。
「純粋理性批判」や「実践理性批判」、「判断力批判」の三批判書を出版したことで知られています。
しかし、どの思想も複雑でわかりづらいと感じている人は少なくありません。
今回の記事では、カントの概説や功績、名言、カントの主な思想について紹介します。
本記事を参考にしながらカントの思想について理解を深めていきましょう。
近代哲学の祖、カントとは誰?
引用:いらすとや
哲学に興味がない方でもカントの名前を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
イマヌエル・カント(Immanuel Kant)とは、東プロイセン(旧ドイツ)の首都、ケーニヒスベルク出身の哲学者です。
哲学者といえば、裕福な過程で生まれ育ち、貴族的な生活を送ったというイメージを持たれやすいですが、カントはケーニヒスベルクでひっそりと暮らしていたと言われています。
ケーニヒスベルク大学に入学後、神学を専攻していましたが、数学や哲学、物理学などの研究にも取り組んでいました。
カントは生涯を通して著作活動を続け、三批判書として知られている「純粋理性批判(1781年)」「実践理性批判(1788年)」「判断力批判(1790年)」などを出版しています。
哲学者カントの功績
世界的に有名な哲学者であるカントは、どのような功績を残したのでしょうか?
批判哲学を確立
18世紀後半、カントは批判哲学を確立しました。
精選版 日本国語大辞典(2023年11月10日閲覧)によると、批判哲学は以下のように定義されています。
認識条件を吟味しないで形而上学を立てようとする独断論(ドグマチズム)に対し、認識の前提、原理、目標、限界などを考察する哲学的批判の立場。たとえばカントやカント学派の主張した立場。 批判説。批判主義。先験哲学。 |
つまり、カントは人間の認識能力の限界を明らかにすることで、学問を新たな視点から捉えようとしたのです。
ドイツ語の使用
カントはドイツ語で初めて哲学を書いたと言われています。
ドイツの哲学においては、ラテン語やフランス語を使用するのが主流とされていました。
当時はドイツ語が田舎言葉のような立ち位置であったため、洗練された言語で書くことが求められたのです。
しかし、カントは意図的にドイツ語を使用し、「超越論的」や「物自体」などの独自の言い回しを生み出しました。
このような試みは「後進国のナショナリズムの現れ」と表現されることがあります。
世界共通語のラテン語や発達したフランス語を使わず、当時ヨーロッパの中で遅れていたドイツではドイツ語を使用しようとする動きが高まったのです。
さらに、ドイツ哲学を研究している人の間では、「ドイツ哲学こそが頂点である」という認識があったと言われています。
参考:岡本裕一朗.教養として学んでおきたい哲学. マイナビ出版. 2019. p.117-119
大陸合理論とイギリス経験論の統合
これまで、カントは大陸合理論とイギリス経験論を統合したと言われてきました。
「教養として学んでおきたい哲学(2019)」では、以下のように説明されています。
カント自身、「すべての知識は経験から始まるが、経験によってすべての認識が完成するわけではない」というようなことを言っています。
つまり、経験のない合理的な理論だけでは立ち行かないが、経験だけですべてがうまくいく訳ではない…だからこそ、経験と合理的な理論をうまい形で合流させようという、いかにもドイツの哲学者らしい考え方をしました。
しかし、「ドイツ哲学は大陸合理論とイギリス経験論を合わせたものである」という考えは、いかにもカント的であると批判されています。
参考:岡本裕一朗.教養として学んでおきたい哲学. マイナビ出版. 2019. p.117-119
カントどのように大陸合理論とイギリス経験論を合一したのか?
より理解を深めるためにも、カントがどうやって大陸合理論とイギリス経験論を統一したのかについて確認しておきましょう。
私たちは知識を形成する際、「経験」から始まりますが、経験だけでは全てを説明できないため、「合理的な説明」を必要とします。
例えば、りんごを落とすと、上から下に落ちます。
繰り返しても上から下に落ちるため、「りんごは上から下に落ちるもの」と言えるかもしれません。
しかし、これはあくまで蓋然性(がいぜんせい)、いわば経験的にしか説明できていない状態です。
そこで物事を説明するには万有引力などの「知識」が必要になります。
このようにカントは、対象を認識するには「経験」と「知識」の両方が必要と捉えたのです。
ちなみにこういった考え方は、「構築主義」や「構成主義」と呼ばれます。
哲学者カントの名言
名言集および格言集(2023年11月10日閲覧)では、以下のような名言が紹介されています。
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哲学者カントの思想をわかりやすく説明
カントは、先ほど紹介した「純粋理性批判(1781年)」「実践理性批判(1788年)」「判断力批判(1790年)」の三批判書を通じて、「人間とは何か」という問いを突き詰めようとしました。
そしてこの問いは、それぞれの著作で以下のような問いに変換されています。
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それぞれ、以下で詳しく確認していきましょう。
純粋理性批判
純粋理性批判においては、カントは「物自体」や「感性・悟性・理性」などの概念を説明しています。
「本体」とも訳される物自体とは、制限の中で私たちに認知を与える起源のことです。
「感性・悟性・理性」は、人間が世界を認知する際に使われる力を指します。
つまり、カントは私たちは対象そのものを認識している訳ではなく、感性などを通じて、対象のイメージを認識しているのに過ぎないと主張したのです。
実践理性批判
実践理性批判における主要な概念は、「定言命法と仮言命法」や「自律と他律」です。
定言命法は「〜すべき」という無条件に発生する動機で、仮言命法とは「〜ならば〜する」といった付きの動機を意味します。
人間の行為において、自らの意志に従った行為を「自律」、自らの意志には従っていない行為を「他律」と言います。
カントはこういった概念を通じて、「道徳とは何か」について考え、人間が自律性を持つということは、人間が「自由」をもつ存在であることを主張しようとしたのです。
判断力批判
カントは判断力批判において、「美的判断」と「目的論的判断」に分けて、自然や芸術の美しさに対する理解を説明しました。
美的判断では、美しさに対する主観性と普遍性を説明し、目的論的判断においては、物事を理解する上で「目的」を仮定してしまうことを説明しています。
まとめ
今回の記事では、カントの概説や功績、名言、カントの主な思想について紹介しました。
カントは批判哲学を確立しただけでなく、ドイツ語で哲学を書いたり、大陸合理論とイギリス経験論を統合したりしました。
西洋哲学全体において多大な影響を与え、カントの哲学はフィヒテやヘーゲルらに受け継がれていきました。
「物自体」や「感性・悟性・理性」など、カントを理解する上で重要な概念はいくつかあるので、カントの思想に興味がある方は入門書などを読んでみると良いでしょう。
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