「哲学においてロゴスとはどういう意味?」
「ロゴスとミュトスの違いとは?」
と疑問を感じている方がいるかもしれません。
ロゴスとは、理性や法則、真理などの意味をもつ哲学用語です。
ロゴスは、神話で万物を説明するミュトスから脱却し、哲学や科学を発展させる上で重要な役割を担いました。
しかし、哲学におけるロゴスの概念がいまいち分からない方は多いのではないでしょうか?
今回の記事では、哲学におけるロゴスの意味や語源、ロゴスとギリシア思想、ロゴスと自然哲学、ロゴスと間違いやすい単語、ロゴスと重要な哲学者について紹介します。
哲学におけるロゴスの意味
哲学を勉強していると「ロゴス」という言葉を目にすることがあると思います。
果たして、ロゴスとはどういう意味なのでしょうか?
まずは、精選版 日本国語大辞典 (2023年11月8日閲覧)を引用して定義を確認してみましょう。
ことば。 ギリシア哲学で、ことばを媒体として表現される理性。 また、その理性の働き。 ギリシア哲学で、万物が流転するという宇宙の真理、理法。 また、万物の流転中に存在する一定の法則や原理。 キリスト教で、神のことば。 また、それが形を得て現われたイエス―キリスト、およびその神性をいう。 |
このように「ロゴス」はさまざまな意味合いを含む言葉であることがわかります。
今回の記事では、哲学関連で用いられるロゴスについて説明するので、この中でも「理性」や「真理」、「法則」、「原則」といった意味をおさえておきましょう。
ロゴスの語源
ロゴスの語源は古代ギリシャ語「lego」です。
「lego」は「言う」を意味する「legein」の名詞形であり、「言われたこと」を意味します。
「dialect(方言)」もロゴスと同じ語源を持つと言われています。
ロゴスの関連語として、「analog(アナログ式の)」や「analogy(類推)」、「dialogue(対話)」、「ideology(イデオロギー)」、「logic(論理)」、「logogram(記号)」などが挙げられます。
ロゴスとギリシア思想
「人間はどうして生きているのか?」という漠然とした問いに答えるためには、「人生観」や「世界観」が必要です。
しかし、哲学や科学が発展する以前は、こういった問いに対して「神話(ミュトス)」が重要な役割をになっていました。
例えば、ホメロスの叙事詩「イリアス」や「オデュッセイア」、ヘシオドスの「労働と日々」などでは、擬人化された神々の様子が描かれています。
しかし、前6世紀の古代ギリシアにおいて、神話に頼らずに世界の本質を理解しようとする動きが見られるようになりました。
これが、人類が「ロゴス」を自覚し、ギリシア思想を発展させていくきっかけとなったのです。
(参考:佐藤正英. 改訂版 高等 倫理. 数研出版株式会社. 2012. p.18)
ロゴスと自然哲学
ロゴスは自然哲学と深い関わりを持っています。
以下、文献からの抜粋です。
ロゴスの自覚は、イオニアにあるギリシア植民地の自然哲学者たちからはじまった。 彼らは、人間や世界の起源を神話で説明する神話的世界観を排除し、たえず変化しつづける現象と自然を研究対象にして、万物の根源(アルケー)を探求した。 万物を一つの原理に還元し、この原理によって万物の生成や消滅を説明しようとした態度は、ロゴスの自覚への第一歩隣、哲学の誕生をつげるものとなった。 |
(参考:佐藤正英. 改訂版 高等 倫理. 数研出版株式会社. 2012. p.18)
このように自然哲学は、ミュトスからロゴスへと移行する上で重要な役割を果たしたのです。
タレス
引用:いらすとや
自然哲学者の中でもタレスは、イオニア自然哲学の創始者とされており、後世の哲学者にも大きな影響を与えた人物です。
タレスは「万物の根源は水である」と唱え、全ての存在は水から誕生すると考えていました。
タレス以外にも、ヘラクレイトスは「万物の根源は火であり、万物は流転する」と考え、デモクリトスは「万物の根源は原子(アトム)」であるとしました。
このように万物の根源、いわばアルケーを探求する態度のことを「テオーリア(観想)」と言います。
理性を使って冷静に物事を観察することで本質を見抜こうとしていたのです。
ロゴスと間違いやすい単語
ここでは、ロゴスと一緒に覚えておきたい重要キーワードを紹介します。
ミュトス(mythos)
精選版 日本国語大辞典(2023年11月9日閲覧)によると、ミュトス(mythos)は以下のような意味を持ちます。
自然・天地・神々・人間・動物などの活動や歴史的事件などについての伝説。 説話。神話。 |
先ほど説明したように、ロゴスの登場以前、人々はあらゆる現象を神々との関わりによって理解しようとしていました。
この時利用された神話が「ミュトス」と呼ばれています。
そうすることで、人々は混沌とした出来事を理解できるようになったのです。
しかし、神話の内容が本当のことかを確かめることができません。
そのため、物事を捉える際はミュトスではなく、ロゴスが主流になっていったのです。
パトス(pathos)
精選版 日本国語大辞典 (2023年11月9日閲覧)では、パトス(pathos)は以下のように紹介されています。
知性(ロゴス)に対して、心の感情的な側面。 激情。 情熱。 情念。 |
つまり、ロゴスが「理性」や「言葉」、「知性」などに関連づけられるのに対して、パトスは「感覚」や「感情」、「感性」などと関連づけられます。
そのため、ロゴスとパトスはよく二項対立の対として用いられます。
他にも、それぞれ「能動性/受動性」や「左脳/右脳」などのニュアンスを含むことがあります。
ちなみに、パトスは有名なアニメソングにも登場する言葉なので、聞いたことがある人は多いかもしれません。
エトス/エートス(ethos)
精選版 日本国語大辞典 (2023年11月9日閲覧)によると、エトス(ethos)は以下の意味になります。
アリストテレス倫理学の重要概念。 習慣的、持続的な性状を意味し、行為の習慣によって獲得した資質をいう。 一般に、ある民族、社会集団文化、時代における慣習、習俗、道徳。 あるいは基底となった精神、特質。 特に、芸術的作品に内在する道徳的、理性的特質。 気品。品位。 |
哲学の分野では、エトスは「時代や社会文化に沿った価値観」を意味します。
なお、ここまで「ロゴス」や「パトス」、「エトス」は人の気持ちを動かし、行動を誘発するのに欠かせない要素として、現在はビジネスのフレームワークとして活用されています。
ロゴスと重要な哲学者
哲学的な意味で用いられるロゴスをより理解するために、ここでは、重要な哲学者であるヘラクレイトスについて確認していきましょう。
ヘラクレイトスとロゴス
古代ギリシアの哲学者であるヘラクレイトスは、「ロゴスは常に存在しているが、はっきりと捉えることが難しいもの」と説明しました。
ヘラクレイトスによると、ロゴスは万物が成立するための根本原理です。
そしてその本質的物質が「火」であると考えました。
これは文字通り「火」を意味するのではなく、「万物は流転する」という考えから、継続的に変化する「火」の存在が象徴として使われています。
まとめ
今回の記事では、哲学におけるロゴスの意味や語源、ロゴスとギリシア思想、ロゴスと自然哲学、ロゴスと間違いやすい単語、ロゴスと重要な哲学者について紹介しました。
人々は世界で起きている事象を説明する上で、神話(ミュトス)を用いてきました。
しかし、神話は真偽を確認するのが難しく、人々は万物の根源であるアルケーを探索するためにロゴスを自覚するようになったのです。
こうして登場したロゴスは、パトスやエトスなどと混同しやすい単語ですが、ギリシア哲学や科学が発展していく上で重要な役割を担った概念なので、しっかりと理解することが大切です。
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