アウグスティヌスは古代キリスト教を代表する思想家で、『告白』や『神の国』などの著書を残しています。
アウグスティヌスに興味がある方の中には「『告白』を読んでみたいものの理解できるか不安」と感じている人はいるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、ヒッポのアウグスティヌスについて、アウグスティヌスの思想、『告白』の概要、アウグスティヌス著『告白』の内容について紹介します。
『告白』を理解する上で重要な概念を説明するので、ぜひ参考にしてください。
アウグスティヌスの『告白』とは
カトリック教会の司教であるアウグスティヌス。
高校の世界史にも登場する人物なので、聞き馴染みがある人もいるのではないでしょうか?
アウグスティヌスの自伝『告白(告白録)』は、主にどのようにキリスト教を信仰すべきかが説かれている書物です。
『告白』について理解を深めるためにも、まずはアウグスティヌスの生涯や時代背景を確認しておきましょう。
ヒッポのアウグスティヌスとはどのような人?
引用:いらすとや
聖アウレリウス・アウグスティヌス(Aurelius Augustinus)とは、ローマ帝国時代に活躍したカトリック教会の司教、および神学者、哲学者です。
西暦354年、北アフリカ・ローマ属州のタガステ(現在のアルジェリア)で、キリスト教徒の母親と異教徒の父親のもとに誕生しました。
16歳のときにカルタゴで弁論術を学びますが、生活は奔放で荒廃していたと言います。
アウグスティヌスは一時期マニ教を信仰していましたが、キケロの『ホルテンシウス』を読んでからローマ哲学に興味を持ち始めるにつれて、マニ教への関心が薄れていきました。
ミラノで弁論術の教師をしている際、母親や司教からの影響を受けて386年に回心、翌年には息子アデオダトゥスと一緒に洗礼を受けてキリスト教徒となりました。
391年にはヒッポ・レギウスと呼ばれる都市の司祭、396年には司教に選ばれます。
没年の430年まで同都市で暮らし続けたと言われています。
アウグスティヌスの主著には、『神の国(426年)』や『告白(400年ごろ)』などが挙げられます。
どうしてヒッポのアウグスティヌスと呼ばれているの?
『告白』を著したアウグスティヌスは、「ヒッポのアウグスティヌス」と呼ばれることがあります。
これは名前が同じ「カンタベリーのアウグスティヌス」と区別するためです。
カンタベリーのアウグスティヌスは、キリスト教を初代カンタベリー大司教として布教しました。
「ヒッポのアウグスティヌス」と「カンタベリーのアウグスティヌス」が活躍した時期は異なりますが、両者が混同しないためにも地名と併せて呼ばれています。
アウグスティヌスの思想
アウグスティヌスはさまざまな思想に触れた後、新プラトン学派の思想に出会います。
新プラトン学派とは、古代ギリシアの哲学者プラトンの思想を引き継いだ神秘主義的思想です。
しかし、アウグスティヌスは「どうして自分が悪を欲するのか」という問いをこの思想によって解消することはできませんでした。
そんな時に出会ったのが「パウロの手紙」です。
パウロの手紙は新約聖書に収められた文書で、アウグスティヌスは神への絶対的な信仰があれば良いと考えるようになります。
参考書では、アウグスティヌスが神に関してどのような思想を抱いていたかが以下のように説明されています。
アウグスティヌスは、生まれながらに罪を負っている人間を救うのは神の恩寵のみだと考え、教会こそがその救いを与える神の国の代理人であると説いた。
そして、彼は、パウロによって唱えられた信仰・希望・愛というキリスト教の三元徳をギリシアの四元徳の上位に位置づけるとともに、神の絶対性と教会の権威を基礎づけた。
参考:佐藤正英. 改訂版 高等 倫理. 数研出版株式会社. 2012. p.36-37
ヒッポのアウグスティヌスが著した『告白』
『告白』とは、397年〜398年にかけて執筆されたヒッポのアウグスティヌスの自伝です。
本書は古代キリスト教文学の傑作と言われており、さまざまな分野に影響を与えました。
日本でも山田晶氏や服部英次郎氏などによって翻訳されています。
アウグスティヌス後期の主要著作『神の国』は晩年である430年の作品なので、自伝といっても『告白』は40歳ごろまでの内容となっています。
しかし、4世紀から5世紀の間にこれほど自分自身と向き合い、自らの行いを飾らずに語っている点が高く評価されており、本書を通してキリスト教との新たな向き合い方を学ぶことができます。
『告白』は全13巻から構成されており、自伝的部分と神学的部分に分かれています。
アウグスティヌス著『告白』の内容
それでは、『告白』にはどのような内容が記載されているのでしょうか?
どうして人間が罪を犯すのか
アウグスティヌスは自分自身が盗みを働いてしまったり、情欲をコントロールできなかったりしたことを自省します。
そして「どうして人間が罪を犯すのか」という問いを打ち立てるのです。
この問いに対してアウグスティヌスは、私たちが目の前の善を優先してしまい、本来の善を忘れているからと答えます。
さらに、アウグスティヌスは「自分が罪を犯したのは自分自身のせいである」と主張しました。
そのため、神と世界など自分以外に「どうして人間が罪を犯すのか」という問いの答えを見出すのは間違っていると考えたのです。
そのため、アウグスティヌスは罪を犯す原因は、「私の自由意志にある」と説きました。
ちなみに「どのような行為が罪になるのか」という基準は、神の意志のみによって決まると主張しています。
キリスト教に回心したきっかけ
『告白』では、アウグスティヌスがキリスト教に回心したきっかけを知ることができます。
アウグスティヌスは自分の人生を振り返り、悪友と遊び歩いたことや、欲にまみれた生活を送っていたことなど、自身の罪深さを振り返ります。
同時に自分がその状況からどのように脱却したのかについても考察しています。
アウグスティヌスは修辞学の先生になるも、自分の情欲に悩まされていました。
どうして回心できないのかと嘆いていたところ、近所から「取って読め」と歌う子供の声が聞こえてきたと言います。
そこでアウグスティヌスは聖書を取ることにしました。
すると、自身の状況を指摘するような言葉が載っており、キリスト教に回心することを決めたのです。
記憶と時間
アウグスティヌスは記憶と時間について考察することで、どのように神を認識できるかを導き出そうとしました。
記憶に関しては、私たちは身体的にも感覚的にも神の存在を認識できないため、記憶を辿る必要があると考えました。
しかし、記憶は結局自分の力に依存しており、自分以外の存在である神を認識するためには、記憶を超える必要があると説明したのです。
さらに、アウグスティヌスは時間も神によって創造されたものであると考えました。
時の流れに流されるのではなく、時間を主体的に生きることで、神に近づけると主張しました。
アウグスティヌス著『告白』が影響を与えた人物
アウグスティヌスが著した『告白』は多くの人に読まれた著書です。
カトリックやプロテスタントをはじめ、ルネ・デカルトやイマヌエル・カント、フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ、マルティン・ハイデッガー、ルートヴィヒ・ヨーゼフ・ヨーハン・ウィトゲンシュタインなどの哲学者に影響を与えています。
カントの思想について興味がある方は、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
今回の記事では、ヒッポのアウグスティヌスについて、アウグスティヌスの思想、『告白』の概要、アウグスティヌス著『告白』の内容について紹介しました。
孟子とは、中国の戦国時代に活躍した儒家の思想家です。
性善説を唱えた思想家として多くの人に知られています。
四徳などの性善説の基本的な考えや、荀子が唱えた性悪説などを理解することで、より孟子の思想についての理解を深めることができます。
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