老子の思想を簡単に解説!道や無為自然の意味とは?

道家の思想を支えたとされる老子は、中国春秋時代に活躍した哲学者、および人間の生き方を説いた書物のことです。

老子という言葉を聞いたことはあるものの、その思想や考え方はよく理解していないという人は多いのではないでしょうか?

そこで今回の記事では、老子について、道家や道教の意味、「道」や「無為自然」、「小国寡民」などの老子の思想について紹介します。

本記事を読むことで老子の基本的な思想について理解できるようになるので、老子に興味がある方はぜひ参考にしてください。
 

老子とは

一般的に老子は、書物の『老子(老子道徳経)』だけでなく、人物のことを指す場合もあります。

以下で、それぞれの概説を確認していきましょう。

人物の老子

引用:いらすとや

老子(ろうし)とは、中国春秋時代(紀元前770年〜紀元前453年)に活躍した哲学者です。

姓は「李」、名は「耳」、字は「伯陽」、諡号は「耼」と言われています。

同時代に登場した学者のことを「諸子」と呼ぶのに対し、学派のことを「百家」と呼びます。

「諸子」には老子の他に、孔子や荘子、墨子、孟子、荀子などの人物が挙げられ、「百家」には道家の他に儒家、墨家、名家、法家などが挙げられます。

(孟子に関しては、コチラの記事で詳しく解説しています。)

老子はこのうちの「道家」の基礎を作った人物として知られており、後に誕生した「道教」は老子が始祖としておかれました。

老子は、書物『老子(老子道徳経)』を書いた人物とされていますが、その詳細は分かっておらず、現在もさまざまな議論が交わされています。

ちなみに、老子という人物は存在せず、道家学派が展開した後に虚構された人物であるという意見も見受けられます。

道家とは?

老子が中心となった学派、道家についても確認しておきましょう。

道家とは、人間は無為自然を成し遂げることで、安らぎを得たり、大成を成したりできるという思想的学派の名称です。

無為自然とは、「作為的な行為を捨て、自然のままに生きること」を意味します。

参考書では、老子と道家に関して以下のように説明されています。

老子・荘子に代表される思想を道家の思想という。
その名が示すように思想の中心は道(タオ)にある。

道(タオ)の概念については下記で紹介しますが、道家を中心に捉える老子と荘子の思想を併せて「老荘思想」といいます。

参考:佐藤正英. 改訂版 高等 倫理. 数研出版株式会社. 2012. p.54

道教とは?

道教についても併せて確認しておきましょう。

精選版 日本国語大辞典(2023年11月13日閲覧)は、道教について以下のように説明しています。

  • 中国に発生した民族的宗教。戦国時代末期に起こった神仙道の宗教化ともいうべきもので、仙人となって不死を得ることを窮極の目的とする。
  • その教祖に老子を奉じ、道家の所説を主要な教義とするところから道教と称しているが、そのほかに、古来の天帝、星辰、山岳などに対する信仰や、民間の俗信を広く取り入れて、多神教的であることに特色があり、その教義は陰陽五行説、讖緯(しんい)説、儒教倫理、仏教教理などを含んでいる。
  • 日本には道教そのものとして伝来することはなかったが、神道、陰陽道、修験道などに微妙な影響を与えている。広義には老荘思想を含めていう。

つまり、道教は老荘思想を基本理念とする中国固有の宗教のことです。

書物の老子

それでは、『老子(老子道徳経)』はどのような書物なのでしょうか?

デジタル大辞泉(2023年11月13日閲覧)では、書物の老子に関して以下のように説明されています。

中国、戦国時代の思想書。2巻。
老子(人物)の著といわれるが、一人の手になったものではない。
道を宇宙の本体とし、道に則った無為自然・謙遜柔弱の処世哲学を説く。
道徳経。老子道徳経。

まとめると、『老子(老子道徳経)』とは古代中国で作成された書物で、人生をどのように生きるべきかという内容が記載されています。
 

老子の思想を簡単に解説

ここでは、老子の思想を支える概念や重要なキーワードをわかりやすく解説します。

道(タオ)

道(タオ)とは、すべての人や物が通るべき場所で、いわば万物創成の母を意味する言葉です。

少し抽象的で分かりづらいかもしれないので、参考書を引用しその意味を深掘りしていきましょう。

  • 老子の説く道とは、天地に先立ち、万物がそこから生まれ、そこに帰るすべての存在の根拠であり、老子はそれを仮に道と呼ぶ。
  • いわば万物創成の母ともいうべきこの原理は、それ自体としてはとらえられず、したがって元来語ることも名づけることもできないものであり、その意味で無とも言われる。
  • 「道は常に為す無くして、而(しか)も為さざるは無し」と説かれているように、道は何もしない(無為)、それでいてあらゆる物事はすべてみちのはたらきにほかならない。
  • しかし、道それ自身は自然、すなわち他者によって動かされず、それ自身によってそうある絶対者なのである。

このように道(タオ)とは、宇宙自然の普遍的法則など、広い意味やニュアンスを含む言葉で、無限のエネルギーをもつ原理なのです。

参考:佐藤正英. 改訂版 高等 倫理. 数研出版株式会社. 2012. p.54

無為自然(むいしぜん)

先ほど少し説明しましたが、無為自然(むいしぜん)とは作為的な行為をするのではなく、自然の流れに身を任せて生きることです。

精選版 日本国語大辞典(2023年11月13日閲覧)によると、無為自然は以下のように定義されています。

作為がなく、宇宙のあり方に従って自然のままであること。
「無為」「自然」は「老子」に見られる語で、老子はことさらに知や欲をはたらかせずに、自然に生きることをよしとした。

ここでいう作為とは、意図的な努力を意味します。

例えば、「お金を稼ぎたい」、「権力者になりたい」、「人気者になりたい」などの欲求にもとづく行為がこれに該当します。

しかし、人間は生まれながらに道に従っています。

生きていく上で達成感や顕示欲、嫉妬心など、いわば道には必要ないものを身につけていくのです。

老子はこういった心に惑わされず、ありのままでいることが大切であると考えました。

大道廃れて仁義あり

老子の思想は儒家に対して批判的でした。

老子から見たら、仁義や善、孝行などの儒家の教えは「形式主義的なもの」であり、マニュアル化しているものだったのです。

「大道廃れて仁義あり」というように、老子から見れば、儒家が仁義の道徳を強調するのは大いなる道がすたれたからであり、人間の本来の生き方は、いっさいの作為を捨て道に従って自然に身をまかせ(無為自然)、私欲を去り、柔和で謙虚な心をもって人と接すること(柔弱謙下)とされたのである。

儒家はエリート向けの思想であり、規則が多い学派でした。

老子は形式的な教えは人生を豊かにできず、自分を見失ってしまうと考えたのです。

参考:佐藤正英. 改訂版 高等 倫理. 数研出版株式会社. 2012. p.54

小国寡民(しょうこくかみん)

小国寡民(しょうこくかみん)とは、国土が小さく人口も少なく、小規模な国のことです。

小国寡民は老子が理想とした国の形であり、素朴な農村共同体のような国を目指そうとしました。

これは、無為、無欲を心がけて生きることで、自然に寄り添った生活を送るべきと老子が考えたためです。
 

まとめ

今回の記事では、老子について、道家や道教の意味、「道」や「無為自然」、「小国寡民」などの老子の思想について紹介しました。

「道」は、老子の思想を捉える上で欠かせない重要な概念です。

老子は儒家に批判的であり、形式主義的な思想を否定しました。

その代わり、自然に従って生きる「無為自然」を目指し、「小国寡民」が理想であると主張したのです。

老子という人物については、未だ不明な点が多いですが、中国春秋時代に活躍した思想家は他にもいるので、中国の思想に興味がある方はチェックしてみてください。


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