ウィトゲンシュタインの言語ゲームとは?具体例を紹介

「ウィトゲンシュタインの言語ゲームとは?」

「具体的にどのようなことが言語ゲームに該当するの?」

と疑問をお持ちの方はいませんか。

言語ゲームとは、オーストリア出身、イギリスの哲学者であるウィトゲンシュタインによって提唱された言語活動の比喩表現です。

ウィトゲンシュタインは言語哲学や分析哲学に大きな影響を与えており、言語ゲームを理解することで、ウィトゲンシュタインの思想についてより理解を深められます。

今回の記事では、ウィトゲンシュタインの概説や名言、言語ゲームの定義や具体例、ウィトゲンシュタインが提唱した重要な概念について紹介します。
 

言語ゲームを提唱したウィトゲンシュタインとは

言語哲学や分析哲学の分野で大きな影響を与えたウィトゲンシュタイン。

言語ゲームとは、ウィトゲンシュタインが提唱した言語活動の比喩表現です。

ここでは、まずウィトゲンシュタインがどのような人物であるかを確認した後に、ウィトゲンシュタインの名言を紹介します。

ウィトゲンシュタインとは誰のこと?

そもそもウィトゲンシュタインとはどのような人物なのでしょうか?

引用:いらすとや

Ludwig Josef Johann Wittgenstein(ルートヴィヒ・ヨーゼフ・ヨーハン・ウィトゲンシュタイン)は、オーストリア・ウィーン出身の哲学者です。

ケンブリッジ大学で哲学を学んだ後、一度オーストリアに戻り小学校教師として働きましたが、再びケンブリッジ大学に復学しました。

最終的には同大学の教授として迎えられています。

ウィトゲンシュタインは4歳まで言葉を話すことがなく、その後も吃音の症状が見られたといいます。

ウィトゲンシュタインの主な著作として、『論理哲学論考(1922年)』や『哲学探究(死後刊行、1953年)』などが挙げられます。

ウィトゲンシュタインの名言

ウィトゲンシュタインは『論理哲学論考(1922年)』において「語りえないことについては、沈黙しなければならない」と記述しています。

この言葉に関して、参考文献では以下のように説明されています。

世界の全体とか価値の評価にかかわる命題は意味がないとした。
そこにも神の死という状況を引き受けようとする思想を見ることができよう。
私たちが他人とともに生きる世界は、ことばで表現できる世界でしかないのである。

わかりやすく説明すると、哲学の分野でよくテーマとなる「どうして人間は生きるのか」、「どうして世界は存在しているのか」などといった問いに対して唯一取れる態度は「沈黙」であるということです。

ウィトゲンシュタインは、こういった問いは言語使用の混乱によって生じたもので、答えを探求することは無意味であると考えました。

参考:岡本裕一朗.教養として学んでおきたい哲学. マイナビ出版. 2019. p.170
 

言語ゲームとは

それでは、ウィトゲンシュタインが提唱した言語ゲームとはどのような概念なのでしょうか?

言語ゲームの定義

まず、言語ゲームの定義を確認していきましょう。

時事用語事典:鈴木康則(2023年11月12日閲覧)では、言語ゲームについて以下のように説明されています(一部抜粋)。

  • 言語は何らかの実在を写した像として機能しているのではなく、日常生活に根ざした一種の「ゲーム」として成立しているとする、ウィトゲンシュタイン(Ludwig Wittgenstein 1889〜1951)後期の用語。
  • ここでの「ゲーム」とは勝敗を競う遊びというより、規則に準じた活動を指す。
  • ただしその場合、規則に従うとはいえ、その規則は必ずしも明文化されているとは限らない。

わかりやすくまとめると、言語活動は人々が発信した言語の意味を読み取り、人々に理解してもらえるように言語を発するものということです。

「何となく意味は分かったけど具体的に理解できない」人は多いのではないでしょうか。

以下で具体例を用いながら言語ゲームについて理解を深めましょう。

言語ゲームの具体例

幼児Aが「大丈夫」を覚える

幼児Aが公園で遊んでいる時に、幼児Bとぶつかって軽くつまずいてしまったとします。

周りの大人たちがその幼児たちに向かって「大丈夫?」と声をかけました。

幼児Bはその問いかけに対して「大丈夫!」と元気よく答えています。

幼児Aは「つまずいてしまったけど、痛くない」状況をどう言葉で表せばいいか分かりませんでした。

しかし、幼児Aはその場面で「大丈夫」の使用方法を学び、幼児Bのように「大丈夫!」と元気に答えました。

このように言語のルールを理解し、他の人にも意味が伝わるように言語を使用することを言語ゲームと言うのです。

「ワンちゃん」というあだ名

AさんがBさんに対して「ワンちゃん」と公園に遊びに行った話をしました。

一般的に「ワンちゃん」は犬を表す言葉として認知されています。

そのため、Bさんは「Aさんが犬を連れて公園に遊びにいった話」と理解します。

しかし、Bさんは話を聞いているうちに「ワンちゃん」はAさんの人間の友達を指していることに気付きました。

公園内のカフェで「ワンちゃん」がカフェラテを頼んだことや、「ワンちゃん」がつい最近結婚式を挙げた話から判断したのです。

Aさんは初めから「ワンちゃん」という言葉を「椀平(わんだいら)さん」のあだ名として使用していました。

Bさんが「ワンちゃん」に対する認識の違いに途中で気づいたように、状況によって言葉の意味が変化し得るのです。

英語の「Tell me about it」

アメリカに留学中の学生Aは、留学先でできた海外の友人と英語で話しています。

課題の進捗が思うようにいかず、学生Aはその友人に向かって「I can’t finish the assignment due tomorrow.」と語りかけます。

友人は「Tell me about it!」と返してきました。

学生Aは言葉通り「それについて教えて」と言っているのではなく、相手が同感していることを察しました。

「Tell me about it」は「本当だよね」や「その気持ち分かる」といった意味が込められたイディオムです。

このように「Tell me about it」の使われ方を理解する過程も言語ゲームに該当します。
 

ウィトゲンシュタインが提唱した重要な概念

最後に、ウィトゲンシュタインが提唱した重要な概念を言語ゲームとあわせて確認しておきましょう。

語の意味とはその使用である

ウィトゲンシュタインは「語の意味とはその使用である」と主張しました。

ある人が月を見上げながら「綺麗」と恋人に話しかけているシーンを思い浮かべてください。

ロマンチックなムードに包まれており、恋人たちはお互いに肩を寄せ合っています。

本来、「月が綺麗」ということは、月の輝きや形に趣を感じ、感動を表すための言葉です。

しかし、このシーンで「月が綺麗」と恋人に対して語りかけることで、「ロマンチックなムードだね」という意味を含めているのです。

この場面では「月が綺麗」と「肩を寄せ合う行為」がセットになっていることが分かります。

「月が綺麗」という言葉に応じて、恋人たちが肩を寄せ合うという規則をテレビなどから学び、恋人たちは規則に準じて活動しているのです。

ウィトゲンシュタインはこのように言葉に対し規則に応じて行動することを「語の意味とはその使用である」と表現しました。
 

まとめ

今回の記事では、ウィトゲンシュタインの概説や名言、言語ゲームの定義や具体例、ウィトゲンシュタインが提唱した重要な概念について紹介しました。

言語ゲームとは、ウィトゲンシュタインが提唱した概念です。

ウィトゲンシュタインは、言語活動は他の人が発した言語の意味を読み取り、他の人に意味が伝わるように言語を使う行為、いわばゲームのようなものと捉えました。

ウィトゲンシュタインは他にも、「事実と事態」や「論理空間」、「写像理論」など、さまざまな思想を展開しています。

ウィトゲンシュタインに興味がある方は、ぜひ入門書などを読んでみてはいかがでしょうか。

また、哲学は大学受験の科目(倫理・政治経済)にも含まれるので、受験勉強にも役立ちます。受験生にもおすすめなのでぜひこの機会に哲学の世界へ一歩足を踏み入れてみましょう。

参考:医学部受験時の社会選択はどの科目を選ぶべき? 科目の適性&難易度を解説


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