ソクラテスと並んで古代ギリシアの三大哲学者と呼ばれるプラトンとアリストテレス。
西洋哲学に多大な影響を与えた人物として世界的に知られています。
しかし、プラトンとアリストテレスは実際に何をしたのか、どのような思想を持っているのかがわからない方は多いのではないでしょうか?
そこで今回の記事では、プラトンとアリストテレス、ソクラテスの概説、プラトンとアリストテレスの思想について紹介します。
プラトンとアリストテレスに興味がある方はぜひ本記事を参考にしてください。
プラトンとアリストテレスはどのような人物?
ソクラテス、プラトン、アリストテレスは、古代ギリシアの三大哲学者と言われています。
それぞれ師弟関係にあたり、西洋哲学の基礎を確立する上で重要な役割を担いました。
プラトンとアリストテレスに焦点を当てて、それぞれの思想や関係性を紐解いていきましょう。
プラトンとは
引用:いらすとや
プラトンとは、ソクラテスを師に持つ、アテネ出身の古代ギリシア哲学者です。
20歳のときにソクラテスと出会い、ソクラテスの精神を学びました。
ソクラテスの死後はイデア論を構築し、アテネ郊外にアカデメイア(学園)を開きました。
プラトンは「理想主義(アイデアリズム)」の祖として知られており、ヨーロッパ全体に大きな影響を与えています。
主な著作には、『ソクラテスの弁明』や『国家』、『パイドン』、『饗宴』、『ポリティア(国家)』、『法律』などが挙げられます。
岡本裕一朗氏は『教養として学んでおきたい哲学』において、以下のように説明しています。
「プラトンを抜きにして、哲学を理解することは不可能であり、もし言及していなかったとしても、それはおそらく知らないだけであり、細かく見ていけば、この議論は、ここでプラトンがやっている…といったことに必ず繋がるといっても過言ではないのです。」 |
参考:岡本裕一朗.教養として学んでおきたい哲学. マイナビ出版. 2019. p.75-76
このようにプラトンの思想は批判や同意を交えながら、絶えず議論され続けているのです。
アリストテレスとは
引用:いらすとや
アリストテレスとはプラトンを師に持つ、スタゲイラ出身の古代ギリシア哲学者です。
17歳のときにアカデメイアに入学するため、スタゲイラからアテネに引っ越しました。
アリストテレスは「万学の祖」と言われており
|
など、幅広い分野で活躍しました。
アリストテレスはプラトンに教えを受けましたが、プラトンの思想を批判的に捉え、発展させる形で多くの言説を残しています。
プラトンの死後は、ミュティレネに移住し、生物学の研究に従事しました。
その後、アテネに再び戻り、アテナイ郊外に学園リュケイオンを開きました。
ちなみにソクラテスとは
引用:いらすとや
ついでに、プラトンとアリストテレスと並んで三大哲学者と称されるソクラテスについても、ここで確認しておきましょう。
ソクラテスとは、アテネ出身の古代ギリシア哲学者です。
西洋哲学の基礎を築いた重要人物として知られています。
前5世紀のギリシャでは、民主政治が発展し、政治や裁判においてソフィスト(知者)と呼ばれる職業教師が登場しました。
ソフィストは真理の基準を人間と捉えており、相対主義の立場を取っていましたが、ソクラテスは人間の生き方における普遍性を求めました。
そのような中で、ソクラテスの考えは一部のソフィストから反感を買い、裁判にかけられました。
死刑判決が下された後、判決が不当と考える者もいましたが、死から逃れるために逃亡する不正行為は自身の信念に背くとして、自ら死を選んだと言われています。
ソクラテスの重要な概念の一つである「無知の知」については、以下の記事で詳細を紹介しています。
関連記事:ソクラテス 無知の知 わかりやすく |
プラトンとアリストテレスの思想
プラトンとアリストテレスが師弟関係にあることを説明しました。
それでは、プラトンとアリストテレスはそれぞれどのような思想を持っていたのでしょうか?
プラトンの思想
イデア論
プラトンの思想の中心となるのは、「イデア論」です。
文献においては「プラトンはたえず変化する感覚的経験の世界を超えて、永遠に変わることのないイデアの世界が存在すると考えた」と説明されています。
つまり、イデアとは「絶対的な実在」のことです。
文献においても
「イデアとは、理性によってとらえられる事物の真の“かたち”、その理想的な“姿”、事物をそうあらしめている永遠普遍の本質を意味している。」 |
と定義されています。
例えば、私たちが不完全な図形から完全な三角形の姿を認識できるのは、三角形のイデアを理解しているからなのです。
プラトンは、目に見えるものが真実ではなく、理性によって認識できるイデアが真の実在であると考えました。
参考:佐藤正英. 改訂版 高等 倫理. 数研出版株式会社. 2012. p.23
イデア界
プラトンは、「なぜ人間はイデアをとらえられるのか」という問いに対して、「人間の魂がイデア界に住んでいたから」と主張しました。
イデア界とは、万物の本質や絶対的な実在、つまりイデアが存在する世界のことです。
プラトンは人間が実在と思っているものは「影」であり、その本質はイデア界にあると考えています。
そのため、世界が変化するのは「影」がゆらめているからに過ぎず、本質は不変的なものなのです。
プラトンは著作『国家』において「洞窟の比喩」を使ってイデア界を説明しました。
私たちが見ているものは、牢獄に繋がれた囚人が見ている「影」のようなものであり、洞窟の壁(現象界)に映った「影」を実在と思い込んでしまっています。
しかし、真実を捉えるには現象界を脱却し、イデア界を見る必要があるとプラトンは主張しました。
ちなみにイデアを認識するには「エロース(イデアへの憧れ)をもとにした「想起(アナムネーシス)」が必要であり、「善のイデア(イデアのイデア)」を認識できる「善美の人」こそが幸せの境地にいると考えました。
参考:佐藤正英. 改訂版 高等 倫理. 数研出版株式会社. 2012. p.23-24
魂の三分説
プラトンは人間の魂には、イデアに向いている「高い部分(理性)」と肉体に繋がれた「低い部分(気概と欲望)」があると考えました。
このことを「魂の三分説」と言います。
プラトンはこの魂の三分説から3つの徳(知恵・勇気・節制)を導き出し、これらをコントロールすることで正義が実現されると主張しました。
知恵、勇気、節制、正義をまとめて「四元徳」と呼びます。
プラトンはこういった考えをベースにして、哲人政治(哲学者の統治)による理想国家を目指し、支配者(統治階級)、軍人(防衛階級)、労働者(生産階級)から構成されるポリスを目指しました。
アリストテレスの思想
形而上学
アリストテレスはプラトンの理想主義を否定し、現実主義の立場を取りました。
真の本質は、「質料(ヒュレー・事物の素材)」に内在すると考え、これを「形相(エイドス)」と呼びました。
例えば、樫の木は「樫の実(質料)」から形相が出現したものであるということです。
アリストテレスは理想に関しても、現実の中に潜むものであり、努力によって実現すると考えました。
最高善
アリストテレスは最高善(幸福な生活)を送るには、「知性的徳」が必要と主張します。
これは知恵と中庸、思慮から構成されており、理性的な活動を楽しむ「観想的生活(テオリア的生活)」によって最高善が実現されると考えました。
さらに、人間は感情や欲望に影響されやすいため、エトス(善い習慣)によってエートス(性格)を身につける「性格的徳」を獲得できると説明しました。
まとめ
今回の記事では、プラトンとアリストテレス、ソクラテスの概説、プラトンとアリストテレスの思想について紹介しました。
ソクラテスとプラトン、アリストテレスはそれぞれ師弟関係にあり、西洋哲学に多大なる影響を与えた人物として知られています。
本記事はプラトンとアリストテレスの思想にフォーカスしましたが、プラトンが理想主義であったのに対し、アリストテレスは現実主義の立場を取るなど、それぞれの思想の様相は異なっていました。
イデアや魂の三分説、最高善などの概念を一つひとつ理解していくことで、プラトンとアリストテレスの思想を理解できるようになります。
コメントを残す